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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年12月6日出題)

第829問(2021年12月5日 松尾八段-郷田九段戦)
(問829-1)
先手松尾八段、後手郷田九段で戦型は相掛かり戦。先手も後手も▲3六歩(△7四歩)を取らせる作戦に出ると、双方飛車で取った為、珍しいほぼ同形になった。しかしその後、後手が頑張った受け方をして弱点が生じ、それをとがめ先手ペースで進む。下図はその途中、少し前に△6三玉の顔面受けで受けているため、後手陣はすごい形になっている。そして今▲9七香と一旦角道から香を逃げたところ。ここで後手はどう指したか?▲7四歩自体を受けることは出来ないが、攻めて来られた時のことを考え次の一手を指したい。ここで指された後手の次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問829-2)
上図から後手もつぶされないように粘り終盤戦に入る。下図、▲8五飛と一つ引いた手に△9八角と打ったところで、次に△7六角成と飛車をいじめることが出来ればたちまち逆転する。そこで先手はどうしたか?この辺り、評価値がそれほど大きく変化しなかったことから双方疑問手はないと思われるが、見ている時は後手が盛り返しているようにも見えた。ここで指された先手の次の一手は?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問829-1解答)「玉の早逃げ、八手の得」
この数手前の△6三玉は受けるために仕方なかったが、この局面まで来ると、今度は一手かけても△5二玉と引きたいところ。△6三玉の位置は、▲4一に飛車でも角でも打たれると厳しいので、大駒の交換や切ることが出来ない。△5二玉としておけば、相手の攻め駒から離れ耐久力もあるので逆転を狙いやすいと言えるし、受けの手に限って言えばこれしかない。

本譜は先手も▲4八金と未然に玉頭を守った手に、さらに△4一玉と引いた手を局後悔やんでいた。この局面での先手の攻めに対して(△4一玉は)一手の価値がなく、ここから難しいながらも先手優勢の終盤戦が続いているのが第2問である。

(問829-2解答)「大駒をいじめられる形にしない」
▲8六飛と一つ引いた手は平凡ながら実戦ではかなり指しづらい一着。と言うのも、一手前に△6五の桂取りを見せて▲8五飛と引いたばかりの上、単に△7六角成を受けているだけの手だから。しかし、引かれてみると確かに後手にも有効な手がなく△9九角成くらいで、依然先手優勢は変わらない。

本譜は、△9九角成に先手からの攻めである▲8二歩成〜▲7三歩成〜▲7二歩がまさに筋で、飛車を持ち駒にしている時に有効。受けきれない後手は、△7七歩から攻め合いに転じたが、先手からの攻めの方が一手早く、中盤機敏に動いた先手がそのまま押し切り先手松尾八段の勝利となった。
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