第840問(2022年2月27日 佐藤天彦九段-豊島九段戦) |
(問840-1) 先手佐藤九段、後手豊島九段で戦型は相居飛車。出だしは矢倉模様で後手が飛車先を受けず銀の進出を優先すると、先手も横歩を取り歩得対手得という戦いになった。さらに角を交換した後、どこから手を付けるか難しい中盤戦だったが、先手が端桂を跳ねるとその瞬間に自陣角を放ち一気に終盤戦へ。下図は今△2五桂と香取りに打ったところ。ちょっと俗っぽい攻めだが▲2七角がいじめられそうで受けが難しい。すでに評価値も70%を超えており先手苦戦だが、ここで大きく差を広げさせない受け方とは?先手の指した次の一手は何か? (答えはこの下に) |
(難易度・・・ |
(問840-2) 上図から評価値の差は広がっていくものの見た目にはまだまだ大変に見える局面。下図は今、△6五桂に▲3四桂と王手をかけられたところ。優勢な方にとってはかなり嫌な王手で、どこへ逃げても気になる手は残る。ここでの最善の逃げ場所はどこか?後手の指した次の一手は? |
(難易度・・・ |
(これより下に解答)
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(問840-1解答)「盤上の駒で受ける”場合の受け”」 実戦、ここで▲2八金と寄った手は驚きの一着。部分的には▲1五香など取られそうな駒を逃げるのは普通だが、それでよければ△2五桂などと打ってはこない。逃げられないので仕方なく▲1八香と打って受けるしかないかと思っていたが、ここへ使わされるのでは一方的に利かされた形となって勝負としてはまずいというだろう。 実戦の▲2八金は玉から離れるので普通はあり得ない受け方だが、これで大きな被害を出さずに持ち駒を温存し反撃の含みを残す実戦的な”場合の受け”と言える。 しかし本譜は△1七桂成から△1五香、そして△2九飛と着実に先手陣に迫り後手優勢。その後先手も反撃を開始し、直接の王手で応手を聞いたのが第2問である。 |
(問840-2解答)「玉は上部へ」 逃げ場所は全部で6箇所あり、すぐに完全にダメな場所が見えないだけに迷いそうだ。しかし、迷った時は上部へ逃げる方が良いことも多い。つまり、寄せる時は「玉は下段に落とせ」というように、逃げるときはその逆になる(もちろん正確に読んで判断するのが第一)。 ここでも、それぞれ逃げる場所により先手からの攻め筋は変わり難しいが△4三玉が一番安全ということだろう。 なお、この局面を激指で確認してみたところ、△4三玉が最善で-1336点、△5三玉は-947点、△3三玉は-897点、と上に上がるのはいずれも後手優勢のまま。そして、△4一玉は-599点とまだ有利だったが△3一玉は94点と互角に、△5一玉と下がるのは、661点と逆転していた。つまり上に上がればどれでも差はあっても後手優勢のまま。ところが下に下がると△4一玉はまだ後手有利だが、△3一玉になるともうどちらが良いか分からなくなり△5一玉では逆転ということのようだ。 本譜は、▲4一銀から▲6一馬と入っても△5一香でまだ後手陣はしっかりしている。そして仕方ない▲2二歩に△4七角から金を入手すると最後は一気に先手玉を詰ませ、後手豊島九段の勝利となった。 |
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