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(4)駒割りとは(上級者以上の方へ)

駒割りの基本的な計算方法は、前のページで見た通りだ。
級位者の場合は、基本的な計算方法だけで十分だと思うが、有段者やそれを目指している人には、もう少し細かい注意事項があるので具体的に見てみよう。
  1. 一歩損の功罪と歩切れの見方
  2. 戦型による駒割りの重要度の違い
  3. 終盤の駒割りと速度の関係
(1)一歩損の功罪と歩切れの見方

級のうちは、一歩損などたいした問題ではないことが多い。それは、見ていれば分かるが、平気で銀損、角損しても、それがまたひっくり返ってしまうことが頻繁に起こるからだ。

しかし、有段者になるとそうはいかない。何か利益を得ての銀損ならまだ勝負にもなるが(たとえば、銀損しても、こちらの飛車だけ成れて、相手の飛角を押さえ込んでいる場合など)、単純な見損じによる銀損は、ほとんど勝負あったと言ってもいい。

そして、それが序盤のうちは、一歩損でも非常に大きいことがある。単純に一歩損だからたいしたことはない、と考えるかもしれないが、ここでも最初のページで説明したことは通用する。すなわち、一歩損と言うことは、自分の方は一歩なくて、相手には一歩余分にあると言うことである。
プロの場合は、序盤から単純に一歩でも損したら、まず勝てないし、アマチュアでももっと強くなりたいと思うなら、一歩にも気をつけなければならない。

また、中盤に入ってからの駒割り計算には、歩の数は普通入れない。しかし、形勢判断するときには、持ち駒の歩は考慮することがある。それは、四歩が三歩でもあまり関係ないのだが、一歩と歩切れは大変な違いだと言うことだ。

一歩あれば、香打ちに対して簡単に受けられる、飛車の横利きに対しても簡単に受かる、しかし、歩切れのため、受けがないと言うことは結構頻繁に起こることだ。

また、攻める時も、一歩あれば、叩いてつながるのに、一歩もないため、切れてしまうということもある。

したがって、形勢判断を行うとき、まず、駒割り(この時は、歩は入れないが)、そして、駒の働き、玉の固さ、手番を確認したら、歩切れかどうかも考慮に入れる必要がある。もちろん、局面によっては、歩のないことがあまり影響ないこともある。しかし、逆に歩切れが死命を制することもあると言うことを頭に入れておこう。
(2)戦型による駒割りの重要度の違い

序盤から終盤の詰み直前まで、駒割りの計算は、形勢判断の有力な材料である。そして、それは、どんな局面でも一応は言えることなのだが、微妙な形勢判断と言うことになると、戦型によって、少し判断を変えなければならないことがある。

つまり駒の損得による形勢判断と言うのは、居飛車対振り飛車とか矢倉などの場合には、非常に有効で分かりやすい。しかし、中盤がないような将棋、終盤に入るや否や即寄せになってしまうようなもの、たとえば横歩取りなどでは、形勢判断が、駒割りだけでは把握しづらいと言うことだ。

これは次の「終盤の駒割りと速度の関係」にも通じることなのだが、横歩取りのような将棋は、中盤からいきなり寄せに入ってしまうことが多く、その場合は、駒得していても不利、と言う場面に出会うことがある。

どこまで駒割りを重要視するかと言うことは大事なことだが、難しくもある。この辺りは、何度も実戦を積み、経験で形勢判断をしていくしかないのかもしれない。
(3)終盤の駒割りと速度の関係

最初の基本要素のところでちょっと話したが、有段者になると、攻めの筋が良く見えるようになるため、かえって駒損しても、「終盤は駒の損得より速度」と思っている人は多い。

確かに、玉に対して攻めれば寄るところであったり、攻めの速度争いになっているのに、桂香を補充しているのは、おかしい。しかし、速度を重視する余り、駒損しても大丈夫と言うのは間違っている場合が多い。
プロの将棋には、「終盤まで駒の損得なし」と言う戦いが非常に多い。これは何を意味しているかと言えば、それだけ終盤であってさえも駒損しては勝てない、と言うことなのだ。

金銀を打ち込んで攻める将棋は迫力があって早いように見えるが、金銀を相手に渡すため、いろいろな受けも生じるのだ。歩を垂らして、と金で攻めるのは、ちょっと遅いようにも思えるが、相手に渡るのは、歩だけで、受けがなくなることが多い。

そして、駒得しながらの攻めは切れないし、たいてい勝てるが、駒損しながらの攻めは、攻めてる時は気持ちいいが、攻めが切れたり、反撃をされると、得された駒で、あっと言う間に自陣が寄せきられてしまう。

一般に受け将棋の人は、駒割りに敏感なので、終盤は「速度」を主体に考えるようにし、どちらかと言うと攻め将棋だな、と言う人は、「終盤も速度より駒の損得が大事」だと考えるようにすれば、より正しい形勢判断ができるようになると思う。
駒割りについては、以上で、次のページでは、駒の働きと遊び駒について説明しよう。

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