2008年1月
★ 1月4日(金) 一粒で五度おいしい対局・・・実戦の詰み問題の作り方
今回の話は、「今週の実戦の詰み」作成の話で、1月2日出題の「今週の実戦の詰み」「やさしい詰み」1月3日出題の「難解な実戦の詰み」「実戦凌ぎの手筋」の答えが書かれています。答えを見たくない方は、先にそちらをご覧下さい。
トップページのミニ感想の更新を見て、正月番組について書いたのかな、と思われた方、すみません。m(__)m
今年は、元旦は人のいる所でテレビを見ていた為、ほとんど記憶に残っていません。大逆転将棋はビデオに撮っておこうとしたら、こちらも出来ず、囲碁も撮り忘れ。正月はほとんど何も見てません。
(実戦譜)
私は将棋センターを営業しているが、実際に将棋を指すことは少ない。初めて来た級位者の人とか、人が極端に少なかったりした時は、指導対局もするがそれ以外ではそれほど多くない。
去年の年末30日のこと。この日は極端に人が少なかったので、伸び盛りの若手N君と一局指した。一応四段だが、もう五段にしても良いかな、という実力なので、当然平手だ。
その将棋は、相振りから私にちょっと見損じがあり形勢を損ねたものの、N君も攻め損ないここでは残していると見ていた。
今、▲6二香と打った所で、△5九歩成が詰めろかどうかを考えていた。
持時間は入間将棋センターでは通常25分の切れると1分。ここで残り5分のうち2分を使って詰めろを考えた。
「(△5九歩成の後)△4九馬に▲同銀は△同と▲2八玉に△3八金で簡単。となると△4九馬には▲2八玉か。△3八馬▲同玉で△7八龍だが、▲4八香で、△4九銀と打つと最後に斜め駒がなくなるな。△3九金から△4九とで相当だが・・・。しかし、▲2八玉と逃げられると、△4八龍に△3九龍と入られないように金合いか。△3九銀にはやはり▲1七玉で斜め駒がない。うーん、足りないかな・・・?」
ここまでで今度は自陣を見て、1分。金を逃げても▲4二角成から▲6一銀も△8四歩で詰めろが続かない。▲5三香とか、いきなりの▲7三香もさすがに足りない、と読んだ。で結局本譜は△5一金寄。
(難解な実戦の詰み作成)
「今週の実戦の詰み」は、多くの場合、将棋センターでの対局を見ていて、「あ、こうすれば詰みだな。」とか「こうなっていれば詰むのに。」と言った局面から作意を作り、余詰めを消して出題している。
土日の間に一局くらいはそういう対局があるので、それほど作成が大変という訳ではないのだが、自分が対局すれば、1局でもそうした局面が出現するので非常に早い。
今回も上の局面は詰まないかもしれないが、局面をちょっといじればすぐ出来るだろうと思っていた。
で、早速柿木ソフトに入れて詰みチェック。すると・・・25手詰!・・・「あれ!?詰みあったのか!」
手順をたどってみると、自分の読み通りに進み、最後△3八金に▲同龍!以下はベタベタと打っていくだけだった。
しかし、よくよく考えてみると、△5九歩成には先手の手番なので▲6一香成と金を入手する。すると、△7八龍には▲4八金という合駒が出来るじゃない!結局、その局面は詰まない。先手に金か桂の合駒があると詰まないのだ。
つまり、部分的には先手玉は詰む形になるのだが、常に金を入手できる態勢である為、詰みからは逃れていると言う訳だ。
さて、それでも金がない形でこれを「今週の実戦の詰み」に載せようと思ったが、手数が25手と長い。今週の実戦の詰みは、基本的に13〜15手を中心にし、長くても19手を超えないようにしてきた。しかも、この実戦の初手はどうしても入れておきたい。
という訳で、内容的にはそれほど難しくはないが、「難解な実戦の詰み」に使おうと決めた。
しかし、もう一つ、ささやかな問題が。
余詰めチェックをすると、▲3二龍、▲2二龍、▲1二龍の非限定は別に直さなくても良いと思う(直すなら龍を飛車にする)が、最終局面に余詰めが。
龍を切って▲6二金の所では▲7一金でも詰んでしまう。ただ、このくらいの余詰めは「実戦の詰み」では甘受しているので、このままで良いかな、と思っていたのだが・・・。(後半へ続く)
(今週の実戦の詰み作成)
結局、25手と長いので今週の実戦の詰みには使えないと思い、今度は数手進んだ自玉を考えてみた。
左図は数手進んだ実戦。今▲6三銀不成と入り込んだところだが、1分将棋で後手玉は詰まないと読み切って△5九歩成と踏み込んだ。
この局面を念のため、柿木ソフトで検証。もちろん詰まない。ただ、▲7三歩成から銀を成って、▲9三香と打つ筋は面白いので、これを使おうと。
つまり9筋に歩が利けば良いわけで、▲9六歩を取ってしまう。さらに持ち駒の歩二枚はいらないので後手の持ち駒に。すると、たちまち出来た、13手詰。
最終3手に余詰めはあるものの、ま、このくらいの余詰めは良いかな、と思い、これをそのまま出題。
「今週の実戦の詰み」の出来上がりだ。ほとんど修正なし。
(実戦凌ぎの手筋作成)
ところで、先ほど「難解な実戦の詰み」を作っている時に、金と桂の合駒があれば、詰まないということに気づいたと書いた。これを使って、超久々に忘れ去られたコンテンツ、「実戦凌ぎの手筋」の問題を出題しようと考えた。
実戦で、もし▲4二角成に手抜いて△5九歩成と成れば左図のようになる(但し、先手がパスしている格好)。
このままでは詰んでしまうので、後手の持ち駒の桂を先手の持ち駒にする。すると桂合いで逃れだが、それだけでは簡単過ぎる。
やはり合駒できる駒は一式あった方が良い。という訳で1四の龍も持ち駒に。そして、さらに5一の金も持ち駒に。
しかし、そうすると、金合いでも桂合いでも逃れてしまう。どちらかを詰むようにしなければならない。(ここで作っている時は、金合いも逃れと思っていたが、龍がいなくなると金合いでもこのままで詰むことに後で気づいた。)
そこで思いついたのが4七の地点を開けること。ただ、そのまま何もしないと上へとん走されてしまうので、4三の歩を4五まで伸ばす。すると・・・▲4八金には△4七金からの詰みが生じた。「よしよし、これで後は桂合いの時に、詰まなければ大丈夫だな」と思い、柿木ソフトへ。
まあ、ひと目では詰まないのだが、確認しないで出題するのはかなり不安で今では出来ない。
5手7手位ならともかく、15手位になると、局面をいじっている間に作意が詰まなくなったりすることは良くあることなので、完成してから最後にソフトで確認すると言うわけだ。
これも歩で詰むことを確認し、桂で詰まないことを確認した。
これで、「実戦凌ぎの手筋」完成!と思ったら、4七の地点を開けたことにより思わぬ効果があった。つまり、「難解な実戦の詰みの最後に△3九金でも△4八金でも詰むという余詰めがあったのが、ここを開けたことで余詰めが消えた。「なんとラッキーな!偶然、余詰めが消せたよ。」
ということで、「難解な実戦の詰み」についても、不要な持ち駒の桂を盤面に配置して完成。
(最後に)
この対局は、一つで、「今週の実戦の詰み」と「難解な実戦の詰み」さらに「実戦凌ぎの手筋」まで作れてしまうと言う「一粒で三度おいしい」実戦だった。
・・・と書いていてふと思った。このほとんど書かなくなってしまった「ミニ感想」のネタにまで使うことが出来たので四度おいしいことになっているじゃない、と。
最近は、小ネタはほとんどつぶやきに、ちょっとした将棋ネタはメルマガに持って行ってしまうため、ここに載せるようなものが何もない。今年ももしかしたらこの一つしか書かないうちに一年が過ぎてしまうかもしれない。
ところで、このミニ感想を書きながら局面を見ているうちに、ある一つの筋に気づいた。それは今週の実戦の詰みに使えそう。と言うわけで、来週9日の「今週の実戦の詰み」問題が早くも作成できてしまった。
この対局一つで五つの問題&ネタに使用。五度おいしい対局になった。