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NHK杯に見る受けの手筋
(2006年8月14日出題)

第61問(2006年8月13日:松尾六段-渡辺竜王戦)
(問61-1)
初手からものすごい勢いで指し手が進み、あっと言う間に同型腰掛け銀の最も良く出る形に。そして、先手の松尾六段が定跡通り▲4五歩△同歩▲3五歩と仕掛けたのに対し、△6五歩とそれほどは見ない返し技で本格的な戦いに入った。
その後、一進一退の力の入った攻防が続き、今先手が▲3六銀と4五の銀で角を取ったところ。先手には次に▲7二角の攻めがあり、もちろんこの手を喰らってはそのまま寄せ切られてしまう。ここで▲7二角を守る為の味の良い受けとは?


(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問61-2)
見ている時は、後手が余していると思っていたのだが、先手の▲8五金や▲4五角など容易に腰を割らない粘りで、形勢は混沌。そして今、▲7四角と王手をしたところ。
王手なのでもちろん逃げるしかないが、逃げ場所は5つ。3場所は詰み、2つは詰まない。安全と感じる方が詰み、危ないと感じる方が残している、という難しい局面だ。じっくり最後まで考えて答えを出して欲しい。


(難易度・・・



(これより下に解答)

(問61-1解答)「大駒に当てて、先手で厳しい攻め筋を消す」
ここでは△5四角が第一感であり、何とも味の良い角打ちとなっている。実は、この一手前、▲3六銀では、この手があるから▲4四銀と金の方を取るのかな、と思っていたのだが・・・。
この角は、7二の地点を守っているのはもちろん、3二龍にも当たっており、先手になっている。さらに、3六の銀にも当たっている上に△7五桂▲同歩△8七角成という筋もあり、四方ににらみを利かしている角なのである。これほど味の良い角は見たことがないと言っても良いくらいの好打であった。



(問61-2解答)「終盤は読みが全て」
この局面は、△5三玉で、▲5二金でも▲4五桂でも△4四玉で安全に見えるが、▲5二角成という妙手があって即詰みとなる(但し、実際はその後も難解)。7筋に逃げるのは、様々な開き王手があり、かなり恐いが、7二でも7三でも僅かに残しているようだ。実戦は、この後、▲9二角成に△6一玉で投了となった。

この局面をもう少し解説したい。
▲7四角に△5三玉で余しているように見えるが、▲5二角成が見えれば、相当危ないことに気づくだろう。実際、見ている時には逆転したのでは、と思っていた。ところが、△7二玉が絶妙の凌ぎ。様々な開き王手があるので、かなり恐いが、どの開き王手も、▲6三金もすべて僅かに残している。なお、△5三玉▲5二角成以下の詰みもかなり難しいが、この辺りの読みのすごさが、「渡辺明ブログ」の8月13日に載っているので参考にしてもらいたい。

この対局は、他にも参考にしたい受けの手筋がたくさんあった。
上記二つの他に問題として出題するとしたら、66手目の△4二玉(早逃げ)、72手目の△5二玉(早逃げ)、86手目の△5八と(両取り逃げるべからず)、97手目の▲8八玉(早逃げの一種)、103手目の▲8五金(上部を手厚く)、107手目の▲8八銀打(先手を取らない受け)、108手目の△7三金(玉頭戦を制する:見ている時は感心した一手だったのだが、ブログによると、この手は疑問で、△6八とで勝ちだったとのこと)、117手目の▲4五角(王手で攻め駒を外す)などだ。

終盤、とん死筋が何度かあったりと、厳密には疑問手もあったようだが、見ている時はまったく気づかず感嘆、感心する手が随所に出た面白い熱戦だったと思う。是非、一手一手考えながら、ゆっくり棋譜を並べて欲しい。
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