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NHK杯に見る受けの手筋

(2012年2月6日出題)

第335問(2012年2月5日 久保棋王・王将-松尾七段戦)
(問335-1)
先手が久保棋王・王将で後手は松尾七段。先手が石田流を目指し3手目▲7五歩と突いたのに対し、後手から角交換をし△5四歩と突いて先手の狙いを阻止した為、力戦調の角交換振り飛車となった。そして、先手は中飛車、後手は居飛車舟囲いの戦型に落ち着き、難しい構想力勝負の中盤戦へ進んでいった。下図は今▲6六角と攻防の急所に角を据えたところ。当然この角筋を受けなければならないが、ここで指された後手松尾七段の次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問335-2)
後手が放った遠見の角は好手に見えたが、先手がしっかり受けきると、逆に負担になり、やや先手有利に傾いていった。下図は(形勢を)離されないように辛抱している後手が△8二歩と打った所だが、後手から攻める場所がある訳ではない。と言うことは、先手も部分的にどこかを受けなければならないということではないが、ここでは、是非指しておきたい何とも味の良い一手がある。先手久保棋王・王将の指した次の一手は?

(難易度・・・



(これより下に解答)

(問335-1解答)「角には角の合わせ」
この受けの手筋でも良く出る「角には角」がここでも最も自然な一手。部分的には、△3三銀や桂で間に合わせておいて、手持ちの角を敵陣に打ち込んで、という考えも出来るが、この局面では打ち込む場所もないし、▲6六角はなかなか追えないのでこの角に睨まれたままだと後手玉方面の駒の進展性も望めない。
ということで、実戦も△3三角と合わせたのだが、端歩交換後▲3三角成△同銀▲6六角とやはりここが急所と角を再び据えた。感想戦ではさらに△4四角と合わせておくのが良かったのではという話も出たように、やはり角には角が受けの基本手筋でもあるということだ。

(問335-2解答)「相手の手のない時には自陣の整備」
ここでは実戦でも指された▲6八金左が何とも味良い絶好の一手となっている。その理由だが、相手の攻めは5七への打ち込みが最も考えられる攻め。そこに一枚前もって利かせているということが一つ目。二つ目に△6九銀の割り打ちを防いでいる点。さらに、7筋の銀と桂がいなくなった時に飛車がダイレクトに金当たりになるのも避けている。
とまあ理屈はそんな所だが、感覚として戦いに入る前に、▲6八金左と指せる感触の良さを級位者の人にも感じてもらいたいと思う。
部分的には▲7四歩と大駒の働きを一歩で止めるのも味良い一着だ。但し、▲7四歩は△同角▲同銀△同飛と無理矢理さばいて来て△5七銀と打ち込まれるかもしれない。だからこそ先に▲6八金左と準備しておいて、それから▲7四歩と止めた方がより安全な訳だ。

実戦は、この後も後手の辛抱が続いたが、先手も丁寧に陣形を整えると差はむしろ広がり、最後は後手の手に乗じて一気に勝負を決めた。
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