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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年6月22日出題)

第504問(2015年6月21日 畠山鎮七段-杉本七段戦)
(問504-1)
先手畠山七段、後手杉本七段で戦型は後手の角交換振り飛車。その角を双方が自陣に打ち合って駒組みは進み、結局先手の居飛車銀冠に後手の振り飛車穴熊と言う形になった。下図は先手が7筋の歩交換を行ったのに対し、後手が△1五歩▲同歩△同香と1筋から攻め、香の交換を試みたところ。このような端攻めは実戦でも良く現れるが、どのように応対するが良いのか。特に級位者向けの常識としてこの局面を取り上げてみた。

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問504-2)
数手前、下図に残る▲7二歩は受けのない厳しい一着だが当時に後手玉を「ゼ」(絶対詰まない形)にする「場合によると」危険な一着にもなりうる。そして実戦もこの瞬間に後手は猛チャージ。飛車を切り先手玉に襲いかかり、今△7四桂と一手詰をかけたところ。△8六の地点を受けるだけならいろいろな手段はあるが、下手な受けは△9四歩が詰めろになり危険だ。また▲同馬△同銀でも先手玉は詰めろではないが、馬が消えると後手に受けの余地が生じるかもしれない。
そこで、ここで指された先手畠山七段の一手は?馬を残しつつ次に何をされても詰めろが来ないような受けとは?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問504-1解答)「一旦は歩を打つのが常識的な手筋」
以前将棋センターで、初段位はあるのにノータイムで▲1五同香と取っていた人を見たことがある。そしてそのたびに図のように「一旦は歩を打つもの」と教えていた。実は、本譜がそうであるように、▲1六歩△同香▲同香△1五歩に▲同香と取れば、単に▲1五同香と取ったのと同じ形に戻る。しかしそれは先手の権利であって、そうならない場合(もっと先手の良くなる変化がある場合)も多い。特に(▲1六同香に)△1五歩と打った瞬間は、先手が先に香を入手しているので、その香をどこかに打ったり、(たとえば局面によっては)▲2四歩△同角▲2六香のような筋も有力な反撃になるということ。

本譜は、△1五角と飛び出た手に▲1八飛からこの飛車を切って、穴熊陣に襲いかかった。その攻めが強烈で、少しずつ先手が良さそうではあったが、後手も粘り、「ゼ」の瞬間、先手陣を強襲。終局間際の局面が第2問だ。

(問504-2解答)「終盤の読み2」
先週に続き、ここでも手筋と言うより、終盤の正確な読みが必要になる局面。△8六金を受けるだけなら香を打っても一旦は受かるが、△9四歩が厳しい追撃。この△9四歩を詰めろにしないのが、実戦▲9七銀の受け。▲8七玉〜▲9八玉の逃げ道を確保しつつ▲8六の地点も受けるという指されてみれば当然かもしれないが、この手が指せるかどうかで勝敗が変わるとなれば、やはり将棋は終盤の力のアップが非常に大切ということが分かると思う。

本譜はこの▲9七銀が決め手。△8八桂成と成ったが、これも詰めろではないため▲7一歩成と香を取り後手玉は受けなし。その局面で後手の投了となった。

なお、最後△9四歩が詰めろになる為には、後手に桂香もしくはもう一枚金駒が必要。そこでその金を一枚多くして、「今日の実戦の詰み」を作成したのでそちらもどうぞ。
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