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NHK杯に見る受けの手筋

(2017年3月13日出題)

第589問(2017年3月12日 佐藤康光九段-佐藤天彦名人戦)
(問589-1)
先手佐藤康光九段、後手佐藤名人で戦形は角交換ダイレクト向かい飛車。ただし、先手が三手目▲8六歩と角頭を突いて始まっている。その後、先手は穴熊、後手は銀冠へと駒組みを進めた。開戦は、後手が振り飛車の桂頭の歩を狙って△9四角と生角を打ったところから。その生角を攻めて難しい中盤戦の攻防が繰り広げられた。下図はその終盤戦。局面自体は終盤の入り口でポイントを稼いだ先手が良くなっている。後手から見ると、穴熊の端にアヤは付けているが、大駒三枚で攻められ、受けきるのは大変な局面。しかし簡単に終わらせないのが名人だ。ここで指された後手佐藤名人の次の一手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問589-2)
後手に粘られてやや攻めあぐねている。今、△4四桂に▲3六にいた銀を▲2五銀と桂を食いちぎり、△同歩と進んだところ。後手の玉頭が開いたので、上から攻める手もありそうだが、先手の穴熊もかなり弱くなっている。そこでどうしたか?受けということに限ってしまえばそれほど難しい手ではない。先手佐藤康光九段の指した次の一手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問589-1解答)「取らずに防御壁を築く」
大駒を切ってくる局面というのは良くある。そしてほとんどの場合、その手に対しては一旦は取ることが多い。ここでも△4一同金と馬を取り、▲同龍に、「さてどう受けようか?」となりそうなところでもある。しかし、龍を近づけてしまうとかえって受けづらくなってしまうことも良くあり、佐藤名人もそう判断したようだ。
単に△4二銀と引いたのがしぶとい受け。二枚飛車の強力な攻めを、金銀五枚で受け、簡単には終わらせないという強烈な攻防が続いた。

本譜は169手まで続いたのでここではまだ半分。この後は後手も攻めに出て、先手も強靭に受けるという展開になった。ただ、どこまで行っても少しづつ先手有利でなかなか後手にチャンスは巡ってこなかったようだ。

(問589-2解答)「穴熊の受け方の基本-空間を埋める」
攻めるなら▲2四香とか桂、銀など何かこの地点に打っていく手が見えるが、先手陣も薄く、△2六歩や△2六桂などの筋を見られ、簡単ではない。そこで、佐藤九段の指した手は▲1八銀。玉の頭に銀を埋めて、穴熊の補強にあたった。このように空間に金駒を埋めたり、▲3八金打など駒を打って受けるのは穴熊の基本でもある。ただし、持ち駒を使ってしまって、攻めが切れてしまうようではいけない。この局面は、手数がかかっても二枚飛車を使えることが確実なので、まずは自陣の強化を優先したということだ。

本譜はしかし、持ち駒を投入したことで今度は先手がしばらく辛抱することになった。そして相手の攻めの面倒を見た後、最後は二枚飛車を使って一気にダッシュ。先手玉に詰みのない状態で後手玉を受けなしに追い込み、先手佐藤康光九段が勝利した。

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