第615問(2017年9月10日 阿久津八段-佐藤天彦名人戦) |
(問615-1) 先手阿久津八段、後手佐藤名人で戦型は角交換振り飛車。先手は銀冠に、後手は四間から向かい飛車に振り直し、△4四銀から△3三桂と構えた。戦いは、この形に頻出する△3四の歩を狙って角を打ったところから。その後、▲4五歩を受ける為に、良く言えば力強く、悪く言えば形の悪い△5四金という受けを強要され結果としては先手がポイントを上げることになった。その後、先手やや有利のまま終盤戦へ。下図は、現状駒割りは五分だが、▲1六角は銀で取られる為、角銀交換。しかし、その駒損以上に▲4三金と▲5三成桂が大きく、後手の受ける形が見当たらないと思える局面。ここでどうするか?後手佐藤名人の指した手を三手まで。攻めを遅らせる受けとは? (答えはこの下に) |
(難易度・・・ |
(問615-2) 上図、後手の巧みな受けに緻密な攻めで返し、形勢は離れず、先手優勢なまま最後の戦いとなっている。下図は、今△7六桂と王手をされたところ。この局面は、何を指してもまだ先手が良さそうだ。しかし普通はどう指すべきなのか?そして先手阿久津八段の指した一手は?ちょっと問題としては不適切かもしれないが、ソフトによると実戦はやや疑問だったらしい。その辺りを含め解説したいので、自分なりの答えをまず出しておいてもらいたい。 |
(難易度・・・ |
(これより下に解答)
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(問615-1解答)「攻めを遅らせる受けの三手」 後手が何もしないと、先手は一番良いときに(▲6八金右などを入れてから)、▲3三金や▲4四金など攻める事ができる。と言って△1六成銀と角を取ってしまうのも、銀を渡すと攻めがさらに厳しくなる。そこで、△4一桂と打ち、▲4二成桂に△2一角と引いて、後手の駒の動きを制約したのが実戦。こうした終盤での受け方は、パターン化した手筋のようなものも多数あるが、この受けのようにこの局面でしか成立しないものもある。これは正確な読みと数多くの実戦的な経験が必要な受けと言える。 本譜はこの手に、▲2三歩を利かし、▲5二金と入った。この一連の攻防はまさにプロの将棋で見応え十分だったが、先手の有利は動かず、このまま終盤戦が続いた。 |
(問615-2解答)「局面によって変わる応手」 問題図の局面、王手なので応手は5つ。私は見ている時、▲同銀△同歩に▲6三成銀で先手勝ちそうと思っていたし、解説も同じことを話していた。この局面、普通に考えたら取るか▲9八玉と逃げるかの二択に見えるが、なんと阿久津八段は▲7九玉。ちょっとビックリした逃げ方だ。もしソフトがなければそのまま信用して、その方が良いのか、となるところだが、現在はかなり信用のおけるソフトがある。と言うことで、この局面を聞いてみると・・・。 ▲7六同銀△同歩▲6三成銀は先手優勢約830点。▲8九玉が先手有利400点、▲9八玉と▲7九玉は互角(やや先手良し)の280点という結果だった。もちろんソフトが必ずしも正しいとは言えないが、特に終盤においては十分信頼性があるのも事実。少なくとも▲7九玉よりは▲7六同銀と取ってしまった方が明快だったのは間違いないと思われる。 但しこのような局面は、ちょっとした違いで正解手も変わってくる。たとえば、▲6八金がなく自陣に金一枚だった場合は、▲7六銀と桂を取るのは危険で▲9八玉と寄るのが正しい。結局、▲4九飛がいなかったらどうかとか、相手の玉に迫る形によっても変わるのでその時々で正確な読みが必要となる。 本譜は、後手も先手玉に肉薄したが、中盤での差が大きすぎたようだ。最後は明快な一手差となり先手玉の必死に後手玉は即詰み、先手阿久津八段の勝利となった。 |
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