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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年12月23日出題)

第729問(2019年12月22日 屋敷九段-野月八段戦)
(問729-1)
先手屋敷九段、後手野月八段で出だしは雁木模様。しかしそこから先手が早めに銀を繰り出そうとしたため、後手は中飛車に振り、結果的に後手の中飛車対先手の左美濃4六銀となった。戦いは▲3五歩に△4五歩と反発したところから。そこからさらに△1五角と攻勢に出ると、一気に終盤戦へ。途中、先手は駒得を目指したが、駒の働きは断然後手が良い。下図は△5六銀の強手に▲5八金と受け、△3三桂と援軍を繰り出したところ。次にこのまま△4五桂と跳ねられてはまずい。そこでどうするか?先手の指した次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問729-2)
どちらが良いのか難しい終盤戦だったが、後手が駒得を回復すると、駒の働きのまさる後手が少しずつ良くなっていった。下図は駒の損得はまったくの互角だが、大駒の働きが違い、△8四桂も急所に刺さっている。ただ、先手の主張は▲4三のと金で飛車が成り込めればまだまだこれからというところ。今△5八とと金を取り▲同金と取り返した局面。4筋5筋に歩が利くし、金銀を持っているので攻めても相当に見えるが、野月八段は手厚い受けで優勢を持続させた。ここで指された後手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問729-1解答)「金を引いてかわす受け」
玉が馬筋に入っているので、▲8八玉と早逃げするのも一目でこれも悪い手ではない。しかしここではもっと良い手がある。それが実戦でも指された▲6八金引。こうすることで、次に▲5六歩が可能になった上に、△6七銀成と金銀交換で自陣を薄くされる手も防いでいる。こうした手が最初に見えるようになれば初段が近いと言える。

本譜は△4七銀成と成ってまだまだ互角の難しい勝負は続いた。しかし、巧みな手順で銀を取り返した後手が駒の働きでまさり、有利に進めて第2問に続いている。

(問729-2解答)「龍で両取りの形」
実戦△3四龍と引くのがこの局面では手厚い一着。生飛車とと金(成駒)取りに龍を引くというのはあまり出てくる局面ではない。それだけに手筋という訳ではないが、常に盤面全体を見れば見つけられる一着でもある。後手からすると、先手に飛車を成られ、と金を寄られるとそれだけで脅威だ。特にこの将棋では何手もかけてと金を作っているので、それを消せるのは大きな手と言える。

それでも本譜は、終盤見応えのある攻防が繰り広げられた。俗手に打った金にハッとするような奇手で切り返し、それを冷静に龍を見捨てて先手玉の寄せに入る。最後は端の玉頭戦となったが、きれいに詰め切り後手野月八段の勝利となった。
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