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NHK杯に見る受けの手筋

(2020年7月25日出題)

第754問(2020年7月24日 郷田九段-青嶋六段戦)
(問754-1)
この対局は新型コロナの影響で深夜に放送されている。先手郷田九段、後手青嶋六段で戦型は相穴熊。相穴熊戦に良く出る振り飛車の△6二飛△5二金型に対し居飛車は▲5八の金をそのままに▲3六歩から▲3七桂を急ぎ、早い段階で▲5五歩を突き戦いが始まった。ただ部分的には良くある形だったので、両者研究範囲だったか指し手のスピードは早く一気に難解な中盤戦から終盤戦へ。下図はその終盤。先手陣は▲7八金打と一枚入れて固く、後手陣は▲7一龍と金を取られ薄い。今▲6三歩と垂らされたところで、攻めが細いとは言え、5、6筋に歩が利くため容易に切れそうもない。ここで指された後手の次の一手は?完全に切らすことは出来そうもないが、攻めを遅らせてチャンスを待ちたい。ここからの三手はどのように進んだか?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問754-2)
上図から攻めも受けも参考になる攻防が続いた。ただ終盤に入っても先手の陣形が固く、少しずつ手負けの状況が続き後手としては辛抱の局面が長い。そして下図、△5三飛成と要の成香は払えたが、金銀交換後に▲1二飛と遠くから飛車を打たれている。直接何かの取りになっている訳ではないが、先手からはいろいろな手があり、たとえば▲8四歩△同歩▲8三歩や▲8三桂成△同銀▲7五歩など安い駒で攻められると受けきれなくなりそうだ。そこで、ここで指された後手の次の一手は?先手の手も必然ではないので難しいが実戦の進行を三手まで。
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問754-1解答)「歩を成り捨てて歩を受ける」
実戦の進行は△6七歩成▲同金直△6一歩。問題図で▲6二金と打たれたり、歩成りから精算して▲7一銀と打たれてはすぐに終わってしまう。なので歩を受ける為に△6七歩成と成り捨てるのが手筋。但しこうした場合は、成り捨てが入るのかどうかも慎重に読みを入れる必要はある。△6六歩は大事な拠点だが背に腹はかえられないということであり、先手も△6七歩成に「手抜きで踏み込まなくても」ということで▲同金直と払って終盤の戦いはまだまだ続いた。

本譜は、先手の攻めの侵攻を一旦は止めたが、▲9六歩と攻めに利かせた桂を攻められ駒の入手を図られると、勢い△6四の飛車を切り▲5三の成香を払って長い戦いに引き込んだ。そして▲1二飛と遠くから飛車を利かせた局面が第2問である。

(問754-2解答)「穴熊、場合の修繕法」
一旦崩された穴熊の陣形を修復するのはある意味単純だ。つまり、玉の回りにベタベタ金銀を貼り付けて行けば良い。たとえば振り飛車なら△8二の地点は特に金や銀を埋めておくのがしっかりした受けになる。ところがここで後手は△8二香の受け。これはこの場合に限った受けで反撃の味を見せている。多くは△8二の地点に桂香歩を打つことは陣形的にはかなり弱体化するので(▲7二に金や銀を置かれただけで受けがなくなる)、オススメの受け方ではないと覚えておきたい。こうした手を指す時は、しっかりした読みと展望が必要だ。

本譜は△8二香▲3四馬△6二金と進んで先手からの攻めが見えなくなり、勝負は混沌としてきた。そしてこの後も手筋を駆使して攻める先手に反撃の味を見せながら受ける後手。最後の最後までどちらが勝っているか分からないような熱戦になったが、最後は先手玉必死に後手玉は詰まずとなり後手青嶋六段の勝利となった。

なお、最後後手玉は詰まなかったが、遠くの方に駒があるだけで詰みという際どいものだった。そういう意味で、「今日の実戦の詰み」を作成してみたのでこちらもどうぞ。
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