第792問(2021年3月21日 稲葉八段-斎藤慎太郎八段戦) |
(問792-1) 本局は決勝戦。先手稲葉八段、後手斎藤八段で戦型は角換わり腰掛け銀。ただ先手の銀は▲5六へ出る前に、後手が△6五桂と形を決めに来ている。戦いは先手の玉頭である▲7五歩から。先手は駒得を目指し、後手は切れないように先手陣に食い付いていった。その食いつきが成功したかに見えたが、辛抱強い先手の巧みな受けで決勝戦らしい熱戦は続く。下図は△7七歩▲同桂△7五歩▲同歩と味を付けて今△3五歩と一歩を取ったところ。△3六歩も見えるので攻めしかないかと思っていたが玉頭の△6六金〜△7六歩も厳しく先手はこちらの玉頭をカバー。ここで指された先手の次の一手は?実戦の進行を三手まで。 (答えはこの下に) |
(難易度・・・ |
(問792-2) 上図から、後手の攻めを一旦余すと今度は先手が猛攻を仕掛けた。しかし簡単には終わらず攻防は続き、下図は先手にターンが回り今▲3四歩と叩いたところ。もちろんこのまま金を取られてはいけないし、取っても引いてもいろいろ嫌な筋は見える。ここで指された後手の次の一手は何か?実戦の進行を三手まで。 |
(難易度・・・ |
(これより下に解答)
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(問792-1解答)「成り駒をずらす手筋」 ここで実戦の進行は、▲8五銀△6六金に▲6八歩。後手からの攻めとしては△6六金から△7六歩が非常に厳しくこれをどう防ぐかと言うことになる。その第一手が▲8五銀。飛車を切られる筋があるので怖いが背に腹はかえられない薄氷の受けだ。対して△6六金に▲6八歩がまさに手筋。こうした手筋は有段者同士の戦いには良く出てくる。金や成り駒は引くほど力が強くなるのでこのような手は考えの中に入るようにしておきたい。 本譜は△同成桂では大きな利かされと見て△7七成桂から先手玉に迫った。それを一旦退けると今度は先手の攻める番になり、▲3四歩と急所の叩きが入っているのが第2問である。 |
(問792-2解答)「王手で一つの攻め筋を消す」 △3二金と引くのは形だが、玉のコビンが開くので角の筋が気になる。そこで△4四角とこのラインに王手で先着した。これに▲8七玉とかわしておくのもありそうだが、攻めに重点を置く▲5五桂に△3二金と引いたのが実戦だ。この後▲4五歩は気になるが、今のところ角のラインがあり▲4三金は大丈夫との読みだったが・・・。 本譜は▲4五歩△同銀に▲2七桂がなるほどの攻め筋だった。これで角筋をそらし▲4三金が実現。ただその後も、難解でどちらが勝っているか分からない終盤戦は続いたが、最後は歩頭に金を放り込む驚愕の寄せが炸裂。先手稲葉八段の勝利となり第70回NHK杯選手権の優勝を果たした。 なお、その詰み手順を元に「今日の実戦の詰み」を作成したのでそちらもどうぞ(中程の大量の余詰めを消す為、盤面はかなり変わっています)。 |
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