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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年7月26日出題)

第810問(2021年7月25日 行方九段-西川和宏六段戦)
(問810-1)
先手行方九段、後手西川六段で戦型は居飛車対振り飛車対抗形の力戦。後手の西川六段が、著書も出している「新生、角頭歩戦法」を採用。これに先手は、▲6八玉△5四歩の交換を入れて▲2五歩と真っ向勝負に行った。本に載っている形に近いが、僅かの違いで全然別の筋が生じる。そのため、序盤から難解な力戦形となった。その急戦調も一旦は小康状態に戻り小競り合いに。そこから再び激しく終盤戦に突入。下図は、△4七歩成に▲4四歩と叩いたところ。金や銀に当たっている上、角の素抜きもありどうなっているのかひと目では分からない複雑な局面。ここで後手はどう指したら良いか?ここからの実戦の進行を三手まで。
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問810-2)
上図のAIの形勢判断はほぼ互角で正しい対応をしたのだが、そのあと数手で形勢は先手に傾いた。見ている時は(後手の手は)自然に見えたので、何が悪かったのか後でソフトで確認したところ、76手目の△4四飛では△4一飛。次の△4八とでは△3七とが良かったらしい。ここで先手60%になりさらに徐々に開いていき、下図は先手優勢75%。しかし、人間的には、△5八金と張り付き、後手は悪いと思っても千日手に逃れられるかもと考えるところ。ここで先手の指した次の三手は何か?優勢、ということを前提に千日手を打開する手段を考える。ここからの実戦の進行を三手まで。
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問810-1解答)「黙って歩と銀を取る-後の先」
実戦△4四金▲7六馬△3四金が落ち着いた対応。先に△3四金と取ると、△4四飛の時に▲5六桂が残る。また、△4八とは金を入手する大きな手ではあるが、何も当たっていないのでこの局面では不急の一手。この△3四金の局面は、後手54%でほぼ互角。ハデな応酬を両者間違えずに熱戦は続いた。

しかし、ここから数手で形勢は先手に傾く。それでも後手は「両取り逃げるべからず」の局面から玉頭の馬を攻め、千日手に逃げられるかという局面が第2問である。

(問810-2解答)「馬を先に捨てる”場合の受け”」
実戦の進行は、▲7九金△6八金に▲同馬。▲7九金はこう受けるところだが、△6八金に▲同馬と馬で取ったのが工夫の一着。この局面、▲6八金と平凡に取ると、再度△5八金と張り付かれ千日手に逃げられそう。それを回避する▲6八馬が好手。
馬という駒は非常に強い駒なので最後に残すのが普通だが、千日手打開の為の珍しい受け方と言える。つまり、これなら△5八金と張り付かれても▲7七馬とかわしてこれ以上の追撃がないということ。金で取っていると▲6八金のかわす場所がなく▲7九金と打つしかなくなる。

本譜は△6八桂成▲同金に△5一歩の粘りを見せる。しかし、▲6二金の俗手で先手優勢。それでも上部を厚くしつつ先手玉に迫ったが、最後は後手玉を華麗に詰めた先手行方九段の勝利となった。
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