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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年10月12日出題)

第520問(2015年10月11日 藤井九段-屋敷九段戦)
(問520-1)
先手藤井九段、後手屋敷九段で戦型は藤井システム対居飛車急戦。但し居飛車は、振り飛車をさばかせないよう二枚銀を繰り出す戦法で、最近良く屋敷九段が用いているとのことだった。その中盤、下図は、数手前△7六歩と打ち、▲8八角と引かせ、8筋を突き捨て△8二飛と回った手に▲6六歩と打ったところ。ここで後手屋敷九段の指した一手は何か?もちろん、何も有効な手を指さずにタダで銀を取られてはならない。

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問520-2)
後手の攻めは成功とは言えない形で終盤に入ったが、先手にも見落としが出て、局面は微差のままの終盤戦が続いた。しかしそこを抜け出しのは先手の藤井九段。中央からの攻め足が早く下図は先手必勝の局面にまでなっている。今、△5六香と打たれ、もし相手玉との兼ね合いがなければ普通に飛車を逃げるところだが、それでは逆転してしまう。ここで指された先手藤井九段の指した次の三手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問520-1解答)「「歩損でも難解」という特殊な局面」
序中盤での歩損は、局面を決定づけてしまうほどの損害になることが多い。なので、ここで△5四銀と引くのは、▲7六飛と取られると、後手から主張する点が何もなくなり、アマでも有段者ならまず考えない類の手だ。ところが、屋敷九段はここで銀を引いた後の展開も考え、じっと△5四銀。▲7六飛に△5三銀で一局と見ていた(あるいはこれが一番難しいと考えていた)。

ただ、この局面での銀引きは例外と考えていた方が良いだろう。二歩損で、大駒の活用もすぐに考えられない状況は相当悪いのが一般的で、実戦では▲6五歩と銀を取られる間に一仕事と考える方が普通で正しい大局観。
実戦は、「微差で先手良し」くらいだったようで、難しいまま中盤から終盤戦へ進んで行った。

(問520-2解答)「王手で飛車取りを防ぐ」
▲4三と△同玉▲6五角と反撃するのが第一感で実戦もそう進んだ。△5六香が飛車取りだからと単に飛車取りを受けるだけでは手番を後手に渡してしまう。こうした終盤では、常に相手玉との兼ね合いで攻めも受けも考えるようにしたい。ここでも▲4三とから▲6五角がピッタリの反撃。これで、相手の受け方によって、決めるだけ決めて香を外せば先手の勝ちまでもう少しということになる。

本譜は、△5四銀と銀合いをした為、▲同角と切り、△同玉に今度は▲4五銀と打ち、銀で香を取る手を残した。そして取った香で、さらに金を入手、終わってみれば先手藤井九段の完勝譜となった。

なお終局図の持ち駒から飛車を取り去り、5筋に歩が利かないようにすると”ちょっと難しい13手詰”になったので、「今日の実戦の詰み」として作成、そちらもどうぞ。

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