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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年4月25日出題)

第545問(2016年4月24日 伊藤博文六段-増田四段戦)
(問545-1)
先手伊藤六段、後手増田四段で戦型は先手の四間飛車に後手の居飛車穴熊。先手は4筋の位を取り▲4六銀の好形を築いたが、後手も四枚穴熊にガッチリ囲い双方不満のない分かれとなった。そして中盤、先手は飛車を左右上下と軽く振り動かし、居飛車の飛車を封じ込めたところはやや指しやすいかと思われた。しかし、下図の2手前、誤算もあり後手に勝負手を与えてしまった。それでも形勢を悪くした訳ではないので、ここでさらなる疑問手を重ねてはいけない。この局面で指された先手伊藤六段の一手は何か。

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問545-2)
先手は飛車を取り、飛銀交換の駒得。しかし、陣形には雲泥の差があるので形勢は依然難解。今、△3七香と露骨に香を打ち込んできたところ。こうした打ち込みに対してどう応対するかは盤面全体を見て考える必要がある。ここで指された先手の一着は何か?「第一感こう指したい」という手ではあるが、相手の陣形が鉄壁なだけに勇気のいるところでもある。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問545-1解答)「飛車を押さえ込む手を優先」
感想戦では、▲6六歩と打つ所で▲5五歩と打ち、角も封じ込めておけば後手の指し手が難しかったようだ。実戦は、▲6六歩と打ち△4六角と先に切られてしまったので、普通なら▲同金と角を取り返さないと駒損をしてしまう。しかし、▲4六同金では△8四飛と走られ、▲6五歩と桂を取っても△8九飛成と成り込まれ、これは角銀交換の駒得でも、玉の固さが違いすぎて先手敗勢だ。そこで▲6五歩と桂の方を取ったのが本譜。これなら△8四飛とは走れないので、この瞬間は銀桂交換の駒損だが、角取りが残っていて形勢は難しい。

本譜は△5五角の後、▲5六歩と打ち、先手は駒得に成功したが、後手も堅陣を頼りに先手玉に食い付き第2問になっている。

(問545-2解答)「(相手の攻めが細い時は)極力駒を渡さない」
ここでは▲2七銀とかわすのが第一感であり、実戦もそう進んだ。ただ、後手の持ち駒が銀だけであるということと、と金や馬の位置が遠いと言うことなどを考慮しての▲2七銀だ。たとえば△7八のと金がもし△6八にいるなら、それだけで▲2七銀とはかわせない(すぐに△5八銀が来る)。こうした相手の攻めが細いという時の基本的な受けの考え方としては、できるだけ駒を渡さず、切らせるか切れないまでも攻めを遅らせることができるかどうかを中心に読み進めて行くこと。

本譜は、後手の攻めも細いので長時間の将棋なら先手も悪くはないのかもしれない。しかし、秒読みで実戦的に勝ちやすいのは穴熊の方というのが大方の見方だろう。具体的に何が悪かったのかは検討しないと分からないが、この後、先手は△3六歩と△3七香を払ったが、その間に△6八とと△8九馬が入り、△2四桂から攻め立てられると、最後は馬を存分に活用され、王手龍取りまでかかり、後手の増田四段の勝利となった。

なお、最後は先手玉が9手詰となり、これをきれいに詰ませて終了したが、持ち駒を変えて11手詰を作成したので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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