将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ

NHK杯に見る受けの手筋

(2016年7月25日出題)

第558問(2016年7月24日 加藤女王・女流王座-佐藤和俊六段戦)
(問558-1)
先手加藤女王・女流王座、後手佐藤六段で戦型は先手居飛車穴熊に対する角道を止めた四間飛車。ただ、対穴熊用に早い段階から角道(飛車先の歩)を開けた為角交換になり、振り飛車は再び△3三に角を据え攻勢を取ることになった。その仕掛けに対し、居飛車も玉頭から反撃し、今5〜7筋で戦いが始まっている。▲7五歩△同歩▲同銀としたところで、次に▲7四歩や▲6四銀と出られては先手の穴熊ペースとなってしまう。ここで指された後手佐藤六段の指した一手は?先手の出足を止めるための次の一手とは?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問558-2)
上図は中盤の難所で互角の攻防が続いていたと思われる。しかしこの後、先手が攻撃目標にした金への狙いはやや的外れだったか(感想戦で)、金を取っている間に△4六歩から△4七歩成とされ後手優勢へと傾いた。今、▲4三歩から▲3二角と飛車取りに角を打ち、紛れを求めたところ。後手から見れば、ここでは優勢になっているのでそれほど無理はしたくない。ここでの自然な一着は何か?ここで指された後手佐藤六段の次の一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問558-1解答)「さばきを封じる金」
▲7四歩や▲6四銀を防ぐなら、ひと目映るのは△6五桂。ただ、これに金を逃げてくれれば大いなる利かしとなるが、▲同飛と切られ▲6四歩と打たれると、穴熊の遠さを生かされそうだ。そこで実戦は△6五金とこの地点に金を打って手厚く受けた。▲7五の銀取りなので、▲7四歩を打つ暇はなく、先手からの筋は▲7六銀だが、△同金▲同金に△7九銀がある。そこで実戦は▲8六銀と引いて辛抱することになった。

それでも本譜のこの局面はまだ互角。しかし、△7六歩に▲6七金と寄り、▲6六歩を狙った手が疑問。この金取りに構わず△4六歩から△4七歩成とした手が好手で後手が優勢となった。感想戦で話されたのは、(△6五の金を狙うのではなく)▲7四歩と打ち、△同金なら▲9六角とこちらの金桂を攻める順。実戦は、△6五の金は取っても、△同桂と目標になりそうだった桂に存分に働かれ、先手の忙しい局面になってしまった。

(問558-2解答)「先手で受けられない所に逃げておく」
ここは後手がはっきり良いので、どこに飛車を逃げても何を指しても悪いと言うことはない。極端な話、明快な勝ちが読み切れるなら△5七とでも良いのだが、▲4三角成と取った位置も非常に良いので、さすがにそれは危険。と言うことで、飛車を逃げるのが自然だが、逃げるとすれば△4六が最も普通だろう。
ここでちょっと面白い実験をしてみた。激指14はどの位置に飛車を逃げるのが良いと考えているかの点数を出したこと。
すると、最も良いと判断したのは、答えの通り△4六飛。この手を仮に100点とする。次に良かったのは、△5七との踏み込み。これでも(△4六飛と比較して)80点くらい。但し既に書いたように人間的には危険な手でお勧めは出来ない。△4二飛と角に当てて引く手も考えられ、この手は60点。△4五飛もほとんど変わらず55点。△4四飛は角道を止めてしまうので、逃げ場所としては相当筋が悪い。しかしそれでもまだ後手優勢で、比較すると50点くらいということ。アマ有段者なら△4六飛がひと目。級位者でもこの局面はこう逃げるものという風に考えて欲しい。

本譜、先手は▲2三角成から▲3四馬と自陣に利かせて粘ったが、中盤で開いた形勢差は埋まらず、最後先手玉は即詰みに討ち取られ、後手の佐藤六段の勝利となった。

なお、先手玉の詰みを持ち駒を変えて、全然違う筋で作成したので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。

先週の問題へ/来週の問題へ

将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ