第560問(2016年8月7日 阿久津八段-羽生三冠戦) |
(問560-1) 先手阿久津八段、後手羽生三冠で戦型は相矢倉戦。先手は最初は早囲いの駒組みだったが、▲3七に上がった銀を▲4八銀から▲5七銀と繰り替えると、玉頭に厚みを築いた。そして戦いは後手の攻めの桂である△9三桂を狙いに▲9六歩と先手玉側の歩突きから始まった。下図はその終盤に入ったあたりで、今△3九角と飛車取りに角を打たれたところ。この局面はもちろん飛車は逃げるしかないが、どこへ逃げるのが良いか。先手の狙っている手、後手の攻めを考慮し、飛車の逃げ場所を決める。ここで指された先手阿久津八段の指した一手は? (答えはこの下に) |
(難易度・・・ |
(問560-2) 先手は後手陣を攻める手をあきらめ完全に入玉狙いになった。しかし、△9五歩▲同香に△8四桂と打たれ、そう簡単に入れる形でもない。それでも後手の持ち駒も歩しかないので(後手にとっても)楽観はできない局面。ここで指された先手阿久津八段の次の一手は何か? |
(難易度・・・ |
(これより下に解答)
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(問560-1解答)「先手を取って狙いの手を指す」 △3九角は矢倉や対振り飛車、それ以外の戦型でもいろいろな局面で良く出てくる。そして▲3八飛と横に逃げることも多いが、この局面では△5七角成と成られた後、△4七馬がすぐ飛車に当たってしまう為良い逃げ場所とは言えない。▲5八飛は考えられるが、後手玉への圧力がなくなり、角取りにもなっていないので、(▲8三金を防ぎつつ)△7四銀や、△9五歩、△8五歩、△7六歩など玉頭からどんどん来られると支えきれなくなりそうだ。その▲8三金が先手とすれば狙いの一着である為、実戦は▲2九飛と一つ引いて先手を取った。△4八角成に▲8三金。これで上部開拓をし、入玉に望みをつないだ。 本譜は、数手後▲7三金と銀を取ることに成功したが、△3七馬が金取りの先手で桂を取られることになり、その後、玉頭から巧みに手を付けられると後手玉への攻め味がまったくないだけに苦しい局面が続いた。 |
(問560-2解答)「押さえの駒を攻める」 △4二の角がいなければ▲8五歩から▲8六玉と簡単に入玉できるが、▲8五歩には△7六歩があり、▲8六銀右とかわせても△5七馬くらいでなかなか入玉できない。実戦の▲8三とが一番後手の攻めをせかしている手と言える。と言うのもこのまま桂を取ってしまえば▲9六玉からの脱出が止まらないからだ。ただ、もちろんこの瞬間に△9六歩と打たれ、簡単には入れない。 本譜はこの後も、先手はしゃにむに入玉を狙った。対する羽生三冠の指し方が、是非並べてもらいたい入玉模様の将棋の指し方として参考になる手順。玉を直接止めに行かず、先手の金銀に働きかけこれを入手。入玉というのは、自分から入りに行ってもなかなか成功せず、また金銀を多く持たれていても入れない。この将棋は、先手陣の金銀をすべて取ってしまい、その取った金銀と、飛車を追いながら作ったと金を引いてきて先手玉を捕まえることに成功、結局先手は何の攻める手も指すことなく寄せ切られてしまった。 実戦は、三段目に入った玉に必死がかかるという珍しい形で投了となったが、その局面に持ち駒を一つだけ変えてみると(銀を桂に)、難しい詰みとなったので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。 |
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