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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年9月23日出題)

第716問(2019年9月22日 丸山九段-佐々木大地五段戦)
(問716-1)
先手丸山九段、後手佐々木五段で戦型は角換わり。先手の早繰り銀に後手は腰掛け銀で対抗。早い段階で駒はぶつかった。しかしその後、後手が角を自陣に打ち整備をはかろうとした為、先手はその形が整わないうちに銀をぶつけ戦いを起こした。下図は中盤から終盤へ入ったところ。(△5五角ではなく)△2八角とちょっと工夫して角を下ろしたが、▲3七歩で止められ角を使うまでには時間がかかりそうだ。そこで直接的には▲6三銀を受けなければならない。ここで指された後手の次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問716-2)
先手からの▲2二歩が利き△3三桂と後手陣は狭くなった。そこを狙って強襲。先手有利な終盤戦となっている。しかし今、△5九飛から▲8八玉に△8七歩と玉頭を叩かれている。こうした終盤での王手は応手を間違えると逆転することが多い。王手なので三択だが、ここで指された先手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問716-1解答)「玉みずから出陣」
△6三歩と打つのは自然だが、それでも▲同飛成△同金▲7二角の強襲を喰うかもしれない。ここは△5二玉とみずから上がって△6三の地点に利かすのが手堅い。玉という駒は実は受けの力も強い。「取られたら負け」という制約があるからなかなか戦場へは出られないし出ない方が良いのだが、駒落ちを指すと玉の強さに気づかされる。取られてはいけない駒だが、動きは金と銀両方の動きが出来る強い駒なのである。

本譜はここから先手が鋭く踏み込んだ。特に▲2二歩△3三桂の交換が入り、△4二〜△3三という逃げ道がなくなったのが大きく、▲6二飛成の強襲が成立。これに後手もゆっくりしていられないと△3九角成の勝負手で返し、△5九飛から王手の△8七歩と叩いたのが第2問である。

(問716-2解答)「矢倉に出てくる受けの形」
この王手には▲8七同金、▲同玉と▲9八玉しかない。矢倉では良く出てくる局面で、どれを選ぶかは勝敗に直結する大事な選択でもある。ここで丸山九段は▲9八玉とかわしたがこのような局面での一つの形。但しちょっとでも局面が変わり、たとえば後手に歩があり、△9五歩と伸びているとすぐに△9六歩が来てまずい。その場合は、(玉頭がひらけていれば)▲8七同玉と玉で取る手も考えることになる。また▲8七同金も形は悪くても十分に考えられる手だが、相手に金が二枚あると△7八金〜△7九金で詰んでしまうので注意しなければならない(金銀の場合も△7八銀のような必殺の必死筋がある)。

本譜は△3九飛成▲7四歩△6五桂に▲9五角。これに△5二玉と寄ったが、▲7二銀が詰めろ飛車取りではっきりした。そして、この後も詰めろが続き最後は受けがなくなり、先手丸山九段の勝利となった。

なお、最終盤は先手玉もかなり危ない形。詰めろ飛車取りの▲7二銀だがもし△6四に金駒がいればいきなり先手玉も詰む。そこで△4三の銀を△6四に置いてみたので「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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